俺のブログ〜ナスビ横丁〜

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俺の好きな曲〜歩き見て回って〜

どうもこんにちは。新しい発見を探そうと家の近くを散歩していたら、知らぬ間に5駅分くらい歩いていたナスビ丸です。もちろん帰りも歩きました。天気の良い日に外を歩くのは楽しいですよね。気分的にスッキリすることもあり、なんとなく春ーーー!って感じがします。

 

そんなことはさておき、今日は北海道が誇るアーティスト、サカナクションの曲について書いていきます。音楽を通した表現者としてのポジションを確立しているサカナクション。個人的には文学がルーツの山口一郎さんが手がける歌詞が特に好きなのですが、バンドの力を重ねて作り上げるライブやミュージックビデオも、常に新しいことを前面に出してくるところがクセになってしまうのです。

 

そんなわけで、まずはこちらをご覧ください。


サカナクション - アルクアラウンド(MUSIC VIDEO)

アルクアラウンド』は2010年初頭にリリースされた、サカナクションの代表曲とも言える楽曲。曲の良さもさることながら、MVが印象的で、ブレイクのきっかけを掴んだと言っても過言では無いと思います。かくいう私も10年前に友人から「ヤバイMVがある」と教えられたのがこの曲でした。まさに衝撃が走ったというか、何を知ったわけでも無いままに「これは芸術」とかイキって言っていたのを思い出します。それ以来、曲やMVへの見方を考えさせられるようになりました。またこれライブで見ても良いんですよ。ステージ上で生の熱量を手にした『サカナクション』としての表現は、音源や動画とはまた異なる魅力が詰まっています。というかいつも新しいことしてるからシンプルに楽しい。同じ素材しか使わないのに毎回完成する料理が変わるレストランみたいな感じ(?)

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曲について

まず曲名の『アルクアラウンド』ですが、これは「歩く+around=歩き回る」という意味の造語、というのが一つ。そして「a look around=見て回る、ひと巡りする」という意味もかけているんですね。カタカナを使ったのは、文節を作らずに日本語と英語の2通りの、いわゆるダブルミーニングの表現。こういうことサラッとやっちゃう山口さんのセンス大好き。

曲についてですが、これはもはやサカナクションというジャンル(こう言えば差し支えないと誰かが言っていたのを引用します)かと思います。なんて言えば良いのでしょうか、鋭く耳に残るエレクトロサウンドに加え、彼らの根底にあるバンドとしての分厚い音の作り方、そして歌は往年のダンスミュージックのような妙に聴き馴染みのあるようで無い、そんな感じです。シンセの音色を左右に振りつつ他の音も加えながら広がりを持たせて、フレーズの最後には毎回何かしらのアクションを加えるのがニクい。

この曲のシーンはずっと夜なのです。それがいつかはわかりません。悲しみに満ちた月がこちらを照らしす夜を待っているのです。待ちわびた夜すらも一人寂しくで歩き続けているうちに、「僕」がどこにいるのかをすら見失ってしまう、何もわからないままでも流れる時の流れに任せて生きていく様子を表しているのだと思います。

<Bメロ部分>

覚えたてのこの道 夜の明かり しらしらと

何を探し回るのか 僕にもまだわからぬまま

ここのBメロ部分で突然の手拍子。印象的な部分で印象的な音を挟み込み、”聴かせる”演出はサカナクションの伝統芸とでも言えるかと思います。歌詞としても、歩く意味なんてわかっていないんだけど、歩き回ってみようと思う、という風。なのにサビではこの地で終わらせる意味を探して、とか言っちゃっているので、この曲の「僕」は相当揺れ動いて迷っていますね。そしてここの部分は2番でも同じように使われていることから、相当印象をつけたい様子。

そしてサビ前のベースが最強に好きです。というか、一回イコライザのBassを最大にしてベース音だけ聴いてほしい。ベースの草刈愛美が出す音はもはや生き物かと思うくらい曲の中を自由自在に動き回るのです。要所要所で現れ気付いた時には後ろに消えてゆく彼女の音は、まるで明かりが落ちた夜の海中を泳ぐ魚のよう。確実に捕まえることはできないのに、なぜかその動きに見惚れ、魅了されてしまっているのです。これだけ動きをつけながらリズムとともに曲として成立させているのは、サカナクションならではの編曲技術ですね。

 

<1番サビ部分>

嘆いて 嘆いて 僕らは 今うねりの中を歩き回る 疲れを忘れて

この地で この地で 終わらせる意味を 探し求め また歩き始める

<ラストサビ部分>

流れて 流れて 僕らは今うねりの中を 泳ぎ回る 疲れを忘れて

この地で この地で 終わらせる意味を 探し求め また歩き始める

悩んで 僕らは また知らない場所を 知るようになる 疲れを忘れて

この地で この地で 今始まる意味を 探し求め また歩き始める

それぞれのサビで用いられている「嘆いて」「流れて」「悩んで」という言葉は、それぞれ「僕」の心がうつりゆく様を表しています。また幾度も使われている『この地』は、今いる場所を示す「this place」と、自分が何者であるのかを表す「my blood=この血」の意味を示していると考えます。「僕」は、自分を嘆き、世に流れ、こうして歩く(=生きる)ことすら終わらせようとも考えていたのにも関わらず、悩んで生きて知らないことを一つ一つ見つけていくことこそが、一人寂しく歩くしかない暗い夜を切り開くような明るい太陽にすらなり得るのだと気づくのです。そうして始まる意味を探し求めてまた歩き出すのです。

人生を歩いて見て回るうちに知ることが増えて、本来必要のないかもしれなかった嘆きや苦しみを感じるうちに、このまま生きることに意味があるのかと自分自身に問いかけることは誰しもあることかと思います。しかし大きな流れに身を任せてただ死なない為に生きているのであれば、その命の灯火は必要なのかを曲を通して問うているのです。もちろん歩き続けると時に躓くこともあります。その時こそ自分が置かれている状況、過去の行動、そして未来の姿を見回すことで、そこから全てが始まる意味が見えてくるというわけです。

MVについて

山口一郎が歩くペースに合わせて設置された歌詞が浮かび上がってくるというMV。芸術でしかないのです最初のパートは生のリンゴをかじりながら歩く男の姿が。あたりは夜が更けている中で、パステルカラーの衣服に身を包んで男が歌い歩く様は、その暗さから少し不気味な印象を受けます。しかしサビに入る直前のBメロで室内に入り、サビに入ると同時に明るい照明の下に分割された歌詞が動き出し、合わせてさっきの男が歌い歩き続けているのです。こんな構図を思いつく人の頭の中を見てみたい。ここで心を奪われた視聴者に、これがバンドによって作られていることを示すように、暗い場所にギターとドラムが現れます。

そのあと2番のAメロに入ると、先ほどの男が紙やPCのディスプレイに入り込むような演出で、踊りゆく歌詞を彩ります。3次元に2次元をあえて組み込むことで、抽象的な歌詞と身近にあるものでバランスを取りつつ、「なんとなくこういうことあるよね」っていう感じを伝えようとしているのだと思います。そして最後は気まぐれな彼らを見せるように「つらつら」という言葉だけが現実世界に帰ってきて、また男が歩き出す。サビ前にはベースを弾く女の姿。バンドサウンドを聴覚だけでなく視覚的に見せることで「あ、そうだったこの人たちバンドなんだと」いうことを再認識させられますね。それにしてもこのベースは聞き応えありますね。

そして2番のサビでは歌詞の通り流れる様子と、この歌詞でいう「僕」が歩いている世界の様子を示し、後半ではボーカルの姿。「さっきから歩いている人、こんなソウルフルな感じで歌ってたんだ!!」という印象から圧巻の大サビ。走り出す山口一郎を追うカメラが、分割されたことでおそらく価値を失いかけていたものに「歌詞」という役割を与えます。曲としてのクライマックスに存在を許可されたような言葉たちが画面を踊り狂い、その後ろでは縦横無尽に歌い暴れる山口一郎が。まさに圧巻でしょうこれ。何回見ても鳥肌が立つシーンです。これは名前も売れるなと感じてアウトロ、余韻に浸っているときにまた衝撃が走るのです。

建物から出て行った山口氏が持つのはリンゴ。なぜか曲がまた始まり、最初のパートに戻ってくる。暗く落ちたり明るく盛り上がる夜は、生きている間は何度も何度もこちらの様子を伺うこともなく訪れ、そして私たちはそれに何も気づくこともなく同じように踊り狂わされてしまう、そんなことを伝えているようです。

本来MVは、音源だけで伝えきれない曲の味を補足するためにあるものだと考えていました。しかしこのMVは、曲の良さを増幅させるどころか、映像として一つのストーリーを高い完成度を持つことができているのです。これを芸術と言わずになんと言えましょう。本当に一連の動きが美しいです。(カメラマンが引くほど大変そう)

おわりに

サカナクションの『アルクアラウンド』がまた一つ特別な曲になればと思います。この記事を書いている最中、エンドレスでリピートしていましたが、何度聴いても新たな良いポイントが見つかるので一つの記事にするのが大変でした。今までで一番時間かかった気がする。ちなみに字数も過去最多の4000字越えでございます。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。絶対今サカナクション聴いていると思います。そして自分なりの良いポイントが見つかれば、私まで教えていただけたら嬉しいです。

サカナクションはこの曲以外にも楽しみ方の多いバンドです。彼らが深く潜り込んだ音楽の海から、ほんの少しの海水を口に含んだ時の味を分けてもらうように聴き込むことをオススメします。何いっているかわかんないですね。

とにかく、たくさん聴いていくうちにどんどん自分なりの好きポイントが増えてくると思うので、そうやって曲の魅力を多くしてってください。私はそうやって聴く音楽が好きです。だから文字に起こしたくなるのです。書くの楽しい。

 

本日も読んでいただいてありがとうございました。

それでは、また。

 

アルクアラウンド

アルクアラウンド

  • provided courtesy of iTunes

 

 

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